気候変動への対応
サステナビリティの取り組みにおけるガバナンス
ガバナンス
当行グループは、地球環境問題への配慮など気候変動に関する対応や、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮、人材育成など、サステナビリティを巡る課題への取り組みを強化し、中長期的な企業価値向上につなげていくことを目的として、頭取を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しております。
サステナビリティ委員会においては、サステナビリティに関連する対応方針や取り組み状況等、経営全般にかかわる重要事項を広い視野で協議し、経営会議・取締役会に報告のうえ、監督を受ける体制を構築しております。その枠組みにおいて、サステナビリティに関連する各リスクについては、適宜、リスク管理委員会で協議を行い、その結果を経営会議・取締役会に報告し、監督を受ける体制にしております。
また、監査役会はサステナビリティへの取り組みに対し業務監査を年2回実施するほか、2024年2月からは監査役2名をサステナビリティ委員会の構成員に加えることで監督体制を強化しております。加えて、内部監査部門が関連部署すべてにサステナビリティへの取り組みに関する業務監査を実施いたしました。今後も内部監査体制の強化に努め、サステナビリティを巡る諸課題への取り組みを積極的に行い、中長期的な企業価値の向上と非財務情報の開示の充実に努めてまいります。

グローバルなサステナビリティへの貢献
脱炭素への組織的な取り組み
TCFD提言への賛同
近年、異常気象や自然災害による被害が激甚化しており、気候変動がお客さまや当行の経営基盤に与える影響は徐々に大きくなっております。こうした状況を踏まえ、気候変動がお客さまや当行に及ぼすリスク・機会を把握し、脱炭素社会の実現に貢献するべく、2022年5月、「 TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言(※)」に賛同いたしました。
金融サービスの提供を通じた脱炭素社会の実現への取り組みを強化するべく、今後情報開示の充実に努めるとともに、お客さまの脱炭素化に向けた活動を多面的に支援してまいります。
(※)TCFDは2023年10月をもって解散いたしましたが、TCFDが担っていた役割はISSB(国際サステナビリティ基準審議会)に引き継がれております。
なお、TCFD提言に基づいた情報開示は引き続き有効であり、当行はその枠組みを利用して開示を行っております。
指標と目標
当行の脱炭素への取り組み(CO₂排出量の削減実績)
当行グループでは、2030年度における削減目標50%(対2013 年度実績)の達成に向けた取り組みを推進しており、2024年度(連結子会社含む)は、2013年度と比較し42.9%の削減となりました。

[Scope1+2排出量(単位:t-CO₂)]
2013年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | |
---|---|---|---|---|
Scope1(※1) | 613 | 424 | 402 | 388 |
Scope2(※2) | 3,278 | 1,697 | 1,823 | 1,835 |
Scope1+2 | 3,891 | 2,321 | 2,225 | 2,223 |
当行は脱炭素化をより加速させるため、調達する電力の一部を富山県内に新たに設置する太陽光発電所からの調達に組み替えする太陽光発電電力販売サービス(オフサイトPPAサービス)の取り組みに向け、準備を開始いたしました。なお、オフサイトPPAサービスによる電力の調達は2025年12月頃を予定しております。
今後も2030年度における削減目標50%(対2013年度実績)の達成に向けた取り組みを継続するとともに、地域特性
を活かしたGX(グリーン・トランスフォーメーション)により、地域の脱炭素化に貢献してまいります。
[Scope3の算定(単位:t-CO₂)]
計測項目 | 2024年度 |
---|---|
出張(カテゴリー6) | 85 |
通勤(カテゴリー7) | 246 |
当行では、サプライチェーンを含めたScope3のCO2排出量把握の取り組みを行っており、2024年度より一部Scope3(※3)の算定も開始いたしました。
(※1)Scope1:当行自らによる温室効果ガスの直接排出
(※2)Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
(※3)Scope3 :サプライチェーン排出量におけるScope1・2以外の間接排出(当行の活動に関連する他社の排出)
戦略
a.機会とリスク
短期(5年)、中期(10年)、長期(30年)の時間軸で、気候変動に伴う機会とリスクを以下のとおり認識しております。当行グループは、お客さまのカーボンニュートラル実現に向けた支援と自らの環境負荷低減への取り組みを実践してまいります。
区分 | 内容 | リスク カテゴリー |
影響度 (※) |
時間軸 | |
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機会 | お客さまの脱炭素社会への移行に伴う投資など、課題に対するファイナンスや金融サービスの提供、コンサルティング等によるビジネス機会の増加 | - | - | 短期~中期 | |
自然災害の激甚化に伴う、お客さまの災害に備えるための防災設備への投資や関連サービスへの投資等の資金需要の増加 | - | - | 中期~長期 | ||
当行の省資源・省エネルギー化による事業コストの低下 | - | - | 短期~長期 | ||
リスク | 移行 リスク |
気候変動に関する規制や税制の変更に伴うお客さまの損失 | 信用リスク | 大 | 中期~長期 |
脱炭素技術の失敗や市場の変化に伴うお客さまの損失 | 信用リスク | 大 | 中期~長期 | ||
物理的リスク | 大規模風水害の発生による融資先の事業停滞に伴う当行の損失 | 信用リスク | 中 | 短期~長期 | |
大規模風水害の発生による当行拠点の毀損 | オペレーショナルリスク レピュテーショナルリスク |
中 | 短期~長期 |
(※)「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」等の情報を参考に、気候変動の影響を受けやすいとされる業種(不動産業等)を対象とした定性的な評価に基づき、1.5℃シナリオにおける影響度を記載。
b.重要セクターの判定(※)
気候変動に伴う移行リスクおよび物理的リスクが当行グループの事業運営や財務内容等に影響を及ぼす重要なリスクであることを認識しております。
気候変動の影響を受けやすいとされる業種の潜在的な影響度と、当行の融資ポートフォリオに占める割合を踏まえた「重要セクター」を選定し、当該セクターに対する定性的な評価を実施しております。
業種 | 気候変動 影響度 |
貸出金額 | 重要度 | 判定 |
---|---|---|---|---|
不動産業 | 中 | 大 | 大 | 重要セクター |
金属加工・金属 | 大 | 中 | 大 | 重要セクター |
電力・エネルギー | 大 | 中 | 大 | 重要セクター |
建設業 |
中 | 大 | 中 | 非選定 |
小売業 |
中 | 大 | 中 | 非選定 |
(※)業種別貸出残高に、環境省ガイドラインで示されたセクター別評価値を加味し重要度を算出
c.重要セクターにおける気候変動の影響
業種 | 移行リスク・1.5℃シナリオ | 物理的リスク・4℃シナリオ |
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不動産業 |
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金属加工・金属 |
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電力・エネルギー |
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d.シナリオ分析 移行リスクおよび物理的リスク
移行リスクについては、選定した「重要セクター」における融資先について、脱炭素社会への移行に伴う財務悪化を踏まえて、当行の信用コストの増加額を算出いたしました。2050年までの信用コストの増加額は最大45億円程度という結果となりました。
物理的リスクについては、水害を対象に、与信先からの担保物件の想定される棄損額を算定し、それに伴い増加する信用コストを算定しました。2050年までの信用コストの増加額は最大0.1億円程度という結果となりました。棄損額は1.4億円程度あるものの、担保余力で吸収されます。
項目 | 移行リスク | 物理的リスク |
---|---|---|
リスク イベント |
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シナリオ |
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分析手法 |
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分析対象 | 「不動産」「金属・金属加工」「電力・エネルギー」セクターにおける融資先 | 日本全国の事業性貸出先のうち不動産担保を当行が保有する先 |
分析期間 | 2050年まで | |
分析結果 | 信用コストの増加額:最大45億円 (うち富山県内27億円、富山県外18億円) |
担保の棄損額:最大1.4億円 (うち富山県内1.2億円、富山県外0.2億円) 信用コストの増加額:最大0.1億円 |
e.炭素関連資産の割合
2025年3月末時点における当行貸出金に占める炭素関連資産の割合は39.60%です。
(「エネルギー」「運輸」「素材・建築物」「農業・食料・林産物」セクター向けエクスポージャー。ただし、再生可能エネルギー発電事業を除く。)
炭素関連資産は当行財務へ影響を及ぼす可能性がありますが、当行はお客さまの脱炭素に向けた取り組みに寄り添い、
様々なコンサルティングやサステナブルファイナンスの提供等により、地域の脱炭素社会の実現に向けて貢献してまいり
ます。
f.融資ポリシー
経営理念およびサステナビリティ方針に基づき、以下のとおり融資ポリシーを定め、本業を通じて持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
積極的に支援する事業 (ポジティブな事業) |
地域経済や地域社会の持続可能な活動と成長を促進する以下の取り組みに対し積極的に支援してまいります。 ①自然環境の保護、環境負荷の低減など環境保全に関する取り組み |
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特定事業等への対応 (ネガティブな影響) |
①石炭火力発電事業 ・新設の石炭火力発電所向けの投融資は、原則取り組みません。 ・ただし例外として取り組みを検討する場合は、国のエネルギー施策を参考に発電効率性能や環境への影響等、個別案件毎に総合的に勘案したうえで慎重に対応します。 ②非人道兵器製造関連事業 ・クラスター弾等の非人道兵器の製造を行っている企業に対する投融資は、資金使途に関わらず取り組みません。 ③パーム油農園開発事業 ・パーム油農園開発向けの投融資を検討する際は、持続可能なパーム油の国際認証等の取得状況や、環境に対する配慮状況、地域社会とのトラブル発生状況等に十分注意のうえ、慎重に対応します。 ④森林伐採事業 ・森林伐採事業向けの投融資を検討する際は、国際認証等の取得状況や環境・地域社会への配慮状況等に十分注意のうえ、慎重に対応します。 ⑤人権侵害・強制労働等 ・国際的な人権基準の主旨に反する児童労働や強制労働など、人権侵害が行われている事業への投融資等は取り組みません。 |
お客さまの脱炭素支援への取り組み
[お客さまのサステナブル経営支援への取り組み]
当行では、お客さまの受ける気候変動の影響や脱炭素化へ移行する企業行動を機会と認識し、持続可能な社会・環境の実現に向け、お客さまの経営改善支援や伴走支援等の多様なニーズに対しコンサルティング業務を積極的に展開し、お客さまのサステナブル経営をサポートしております。2024年度は、SDGs取り組み支援や脱炭素経営の啓発活動、DX支援、人材紹介、事業承継等、最適なコンサルティングをビジネスステージに応じて提供し、お客さまのサステナブル経営を実現すべくコンサルティング業務に積極的に取り組みました。
<当行が取り組みを行ったコンサルティング業務の事例>
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[サステナブルファイナンスへの取り組み(※)]
(※)環境・社会課題の解決に向け、お客さまのサステナビリティへの取り組みへの支援を通じ、持続可能な地域社会 の実現に資するファイナンス
お客さまのサステナブル経営の実現に向けた取り組みへのコンサルティングが起点となり、事業活動の省力化や再エネ関連等のサステナブルファイナンスに繋がる機会が増加しております。このようなコンサルティングを起点とした取り組みも奏功し、年間のサステナブルファイナンスの新規実行額は198億円となりました。
2024年度は前年度と同様にお客さまの事業活動から発生しうるポジティブなインパクトとネガティブなインパクトを特定・分析のうえ目標を設定し、その達成状況を確認していくファースト・ポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)の取り組みが寄与いたしました。
また、持続可能な社会の実現に資する資金を継続的に提供していくため、2025年度よりサステナブルファイナンスの目標をこれまでの毎年度投融資額130億円から、2021~2030年度までの新規実行累計額2,000億円へと中長期的な目標に見直しいたしました。この目標額は、お客さまの気候変動への対応に重点的に取り組むという当行グループの方針を反映したものになります。
引き続き地域金融機関として、総合金融サービスの提供とお客さまのサステナブル経営に資する取り組みを強力に進め、持続可能な社会・環境の実現に向け取り組んでまいります。
目標:2021~2030年度までの新規実行累計額2,000億円 実績:2021~2024年度までの新規実行累計額707億円(うち2024年度新規実行額198億円) |
リスク管理
気候変動リスクは、当行グループの事業運営や財務内容に影響を及ぼす重要なリスクの一つと位置づけております。気候変動に起因する移行リスクや物理的リスクを認識する等、統合的リスク管理の枠組みにおける管理体制構築に取り組んでおります。
その内容については、適宜、リスク管理委員会で協議を行い、経営会議・取締役会へ報告し、監督を受ける体制としております。
本件に関するお問い合わせ先
総合企画部サステナビリティ推進室
TEL:076-461-3952
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